生活に根付く、暮らしの道具を作り続けて
二戸駅に降り立ち、二戸市街地を背にして似鳥トンネルを抜け、山の向こうへ。浄法寺地区は、古くから稀少な国産漆の主要産地とされ、その漆を掻き、美しい暮らしの道具を作り出す技術が脈々と継がれ、根付く土地。
浄法寺漆にまつわる記録は、縄文遺跡からの出土品に遡る。漆を塗布した日常の道具がすでに多岐にわたるものだった。平安時代には、現在の浄法寺塗の起源とされる「御山御器(おやまごき)」が生まれた。飯椀、汁碗、皿の3つが入れ子になった実用的な器を、古刹天台寺の僧侶たちが日々の食事のためにと自作したのだ。
「浄法寺歴史民俗資料館」を訪ねれば、変わりゆく時代の中で継がれてきた浄法寺漆のある地域の暮らしやその歴史をたどることができる。
今もなお継承される塗師たちの仕事に触れ、浄法寺塗を手に取るなら、「滴生舎」へ。浄法寺の漆の器の魅力、用の美を追究するデザインに出会うことができ、漆器の制作工程や塗師の技を見学できるだけでなく、漆の産地である浄法寺を知ることができる。
さらに足を伸ばして散策すれば、漆の原木が数多く育てられる「漆の森」へ。4000本ほどが植えられ、シーズン中の晴れた日には黙々と漆掻きをする職人たちの姿がある(漆かぶれを避けるため、必要以上に近寄らないこと。特に肌の弱い方は漆の木や葉にも触れないよう十分注意を)。
巡るほど、浄法寺漆のほんものの深さに引き込まれていく旅。市街地への帰路では、「漆染め」を行う「ポトラガーデン」への立ち寄りもおすすめ。
写真:安彦幸枝、tarakusa、二戸市
- マップで詳細を見る
- 浄法寺歴史民俗資料館 →
- 滴生舎 →
- 漆の森 →
- ポトラガーデン →