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ほんものに出会う旅 5

ROUTE & SPOT

金田一温泉郷に泊まる

金田一温泉郷に泊まる
テロワールを味わいつくす旅の拠点。

農と湯がともにある癒しの郷

二戸のテロワールを味わう旅の拠点とするのに最適なのは、市の東北隅に位置する金田一温泉郷。馬淵川のほとりに1626年(寛永3年)から続き、江戸時代には南部藩の指定湯治場となり、マイルドな肌あたりの泉質で皮膚病への効能があるとされ、武士たちが湯治に訪れた記録が残されている。

もともと10つの源泉があったが、現在使われているのは4つ(大湯、玉の湯、金栄の湯、黎明の湯)。4つの源泉からなる宿の湯は、日帰り入浴が可能。それぞれの湯をはしごしてみるのも良い。

古くから農業を基盤にしてきたエリアであり、現在でも温泉宿のまわりに田畑や果樹園を見ることができる。温泉郷のゲートをくぐって一面に広がる稲田で育つのは、岩手県のオリジナル品種「いわてっこ」や「きらほ」、そして地酒・南部美人の原料となる酒米「ぎんおとめ」。その炊きたてごはんやお酒を、季節ごとの地元食材とともに楽しむことこそ、テロワールを味わう旅の醍醐味だ。

6つの温泉宿からなる小さな温泉郷を歩いてみれば、さまざまな発見がある。温泉宿の近くの観光農園では、夏のブルーベリー摘み、秋のりんご狩りなど季節ごとの体験を楽しみ、生産者に出会うことができる。

動物や植物などの遺骸を核として凝結した球体の化石「ノジュール」が現存する馬淵川の河畔、芥川賞作家である三浦哲郎ゆかりの家、出会った人に幸運をもたらす存在として伝えられている座敷わらしを祀る神社、老舗の南部せんべい店と、文化と出会う散策が楽しい。

写真:安彦幸枝、tarakusa、二戸市

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ほんものに出会う旅 #5「金田一温泉郷に泊まる」でご紹介したスポットリスト

源泉「大湯」をヒートポンプ式で加温することで成分を維持し、とろりとした優しい感触の湯が楽しめる。宿の周りにはさまざまな農作物が育つ田畑が広がり、季節ごとに表情を変える。
住所:岩手県二戸市金田一字長川41
電話番号:0195-27-2131

金田一温泉郷に数ある源泉のひとつ「玉の湯」に浸かれるのはここだけ。レトロな館内と若女将の優しく軽妙な語り口に癒される。宿泊では、二戸の恵みをふんだんに取り込んだ料理が自慢。ロビーの一角に設けられたカフェスペースも人気。
住所:岩手県二戸市金田一字湯田43-5
電話番号:0195-27-2221

旅館名の「きたぐに」は、創業者と親戚関係にあった芥川賞作家の三浦哲郎氏が名付けたもの。手足をのばしてゆったり入れる大岩風呂が自慢。源泉「黎明の湯」を使用。館内には三浦氏の著書や写真を展示するコーナーがある。
住所:岩手県二戸市金田一字大沼24-20
電話番号:0195-27-2531

ホテル金田一 (ほてるきんたいち)

IGRいわて銀河鉄道「金田一温泉駅」から一番近い温泉宿。源泉のなかで温度が最も高い「金栄の湯」を引く。ゆっくり湯に浸かり、眼下に馬淵川を望めば、旅の疲れがほぐれていく。
住所:岩手県二戸市金田一字大釜25
電話番号:0195-27-3111

源泉「黎明の湯」を使用した単純泉の肌に優しい泉質で、特産のりんごや季節の花などを浮かべた季節のお風呂が登場することも。食事付入浴は要相談。
住所:岩手県二戸市金田一字大沼24
電話番号:0195-27-2231

スパドーム (すぱどーむ)

源泉「黎明の湯」を使用。朝早くから夜遅くまで営業しているのが嬉しい。電気風呂や遠赤外線のサウナ、水風呂など種類豊富。
住所:岩手県二戸市金田一字湯田53
電話番号:0195-27-2511

緑風荘源泉 (りょくふうそうげんせん)

「緑風荘」の源泉「大湯」に触れられる場所。ある日、自然に囲まれた田んぼのなかから突如として湯が沸いたそう。泉質は微量の放射線を含む無色透明の低張性弱アルカリ性単純温泉で、源泉の温度は33.5度前後。
住所:岩手県二戸市金田一字湯田59-14

「金田一温泉観光りんご園」では、地域の有機資源を活用し、農薬をできるだけ使わない栽培に努めている。ブランドりんごのはるか「冬恋(ふゆこい)」をはじめ、「つがる」、「きおう」、「紅いわて」、「シナノゴールド」、「ジョナゴールド」、「サンふじ」、「王林」などの甘い果実は、降水量が少なく昼夜の寒暖差が大きい二戸の風土だからこそ育まれたもの。秋にはりんご収穫祭も開催される。
住所:岩手県二戸市金田一字中里

湯ったり遊っくり悠々ブルーベリーファーム (ゆったりゆっくりゆうゆうぶるーべりーふぁーむ)

毎年7月中旬から8月上旬は農園が開放され、摘み取り体験ができる。栽培している品種は、甘くてコクがあり、ジャムなどの加工用にも適した「ルーベル」、青色の濃い大粒が実る「ブルーレイ」、甘みが強く生食に適している「バークレイ」、繊細な味わいが楽しめる「エリオット」など。現地にて、それぞれの品種の食べ比べができる。
住所:岩手県二戸市金田一字長川

金田一温泉郷の稲田 (きんたいちおんせんきょうのいなだ)

金田一温泉郷のゲートをくぐると両手に広がる稲田の風景。太平洋沿岸に吹く冷たく湿った東寄りの風「やませ」の影響で、安定した稲作が難しいと言われてきた二戸。気候に適した開発が進み、金田一では耐冷性の高い岩手県のオリジナル品種「いわてっこ」や低アミロース米で冷めてもモチモチした食感が続く「きらほ」、南部美人の酒造りに欠かせない「ぎんおとめ」などが栽培されている。
住所:岩手県二戸市金田一字沖

藤原せんべい店 (ふじわらせんべいてん)

二戸では、古くから小麦粉を原料とする「南部せんべい」が、ごはんやおやつとして親しまれてきた。昔ながらの木炭で焼く「藤原せんべい店」の原料は、小麦粉・ごま・塩・重曹のみ。小麦粉は香り豊かで粉自体に甘みがある岩手県産の南部小麦100%、炭は二戸の折爪岳の麓で焼いているものを使うなど、地元素材を生かしてつくられている。
住所:岩手県二戸市金田一字八ツ長64
電話番号:0195-27-3847

藤原製菓店 (ふじわらせいかてん)

1950年創業の藤原製菓店が作るのは、かつて子どもたちの最高のおやつだったという大麦や小麦のもやしを使用してつくった自然な甘みの水飴。麦芽には「ジアスターゼ」という酵素が多く含まれ、これが炭水化物に作用すると麦芽糖になる。地元では、この水飴を南部せんべいに塗ったり、料理に使ったり、漬物の隠し味に使うそう。手づくりの麦芽入り水飴に醤油やニッキを混ぜたレトロな可愛さが光る「たから飴」も人気。
住所:岩手県二戸市金田一字荒田79-4
電話番号:0195-27-2672

亀麿神社 (かめまろじんじゃ)

「座敷わらしの里」として知られる金田一温泉郷。座敷わらしは、古くから南部藩を中心に伝わる子供の姿をしている精霊。住みついた家や、出会った人に幸運をもたらす存在として愛されている。なかでも、「座敷わらし伝説の宿 緑風荘」に現れる「亀麿(かめまろ)」には、昔から多くの人が出会い、たくさんの幸運の体験談が語り継がれている。緑風荘の裏庭には、亀麿を祀る神社がある。
住所:岩手県二戸市金田一字長川41

金田一温泉 薬師神社 (きんたいちおんせん やくしじんじゃ)

緑風荘を出て橋を渡り、「ダンジャ坂」を上がると温泉神社がある。その不思議な坂の名は、芥川賞作家である三浦哲郎の父の生家の屋号「壇沢」の読みに由来している。開湯されて間もない頃、毎日湯治に通う正体不明の女性がおり、湯元の主人の枕元にその女性が現れたことで、ここに社を建てて薬師如来を祀ったのが神社の由来とされている。神社から周囲を見渡せば、民家や宿、畑地が階段状に広がり、河岸段丘ならではの風景を見ることができる。
住所:岩手県二戸市金田一字湯田78-2

馬淵川河畔 (まべちがわかはん)

北部北上山地など1,200メートルを越す山々の中に生まれ、いくつかの川を合わせながら二戸市を北上し、青森県八戸湾に注がれる馬淵川。その川が大きく蛇行する金田一温泉付近の河畔は化石の名所でもあり、世界の研究者たちの注目も集める。河畔を散策すれば、動物や植物などの遺骸を核として凝結した球体の化石「ノジュール」を見つけることができる。
住所:岩手県二戸市金田一字長川

石渕橋 (いしぶちばし)

馬淵川と河畔を、四季それぞれの姿で眺めることができる場所。折爪岳から澄んだ湧き水が流れ込むことから、鮎の友釣りが夏の風物詩となっている。
住所:岩手県二戸市金田一