雑穀、おやつ、三大ミート
旅で出会いたいのは、その土地ならではの風土と生産者のこだわり、暮らしの知恵が形成した郷土の味。二戸には、良質な肉から雑穀まで、歴史に裏打ちされた奥深き食文化がある。いざ、鼻を利かせて美しき味を追うルートへ。
二戸が「三大ミート」として誇るのは、雄大な稲庭高原でのびのびと草を食んで育つ「いわて短角和牛」、口溶けの良い脂が強みの「佐助豚」、こだわりの飼料で育てる「ブランド鶏」。
そして、太平洋沿岸から吹く冷たい偏東風の影響で稲作が難しいこの地方で、古くから日々の糧として食されてきたのが、ひえやそば、小麦、大豆などの雑穀。ビタミンやミネラルなどの豊富な栄養素が含まれており、米に代わって人々の暮らしを支え、品種改良により稲作が安定した今でもなお、しっかりと地元の食に根ざしている。
川魚などで出汁をとった汁に小麦粉を練ったものを入れる「ひっつみ」、稀少な二戸在来品種を使用した「玄そば」、蕎麦や小麦を手延べして三角形に切ったものを茹で、にんにく味噌をつけて食べる「かっけ」など、二戸の雑穀料理を知るほど、より美味しく食べようと知恵を絞った先人たちの姿を伺うことができる。
さらに、その素朴で愛らしい姿形に思わず心躍り、別腹に詰め込んでしまうのが、お土産店や産直などで出会う二戸の郷土おやつだ。地元の女性たちが集う「佐太郎茶屋」を訪ねれば、「てんぽ焼き」や「へっちょこ団子」を一緒につくりながら、それらが生まれた背景を聞くことができる。北東北のソウルフードでもある南部せんべいの歴史から新しい楽しみ方までを知りたいなら、二戸駅から歩いて訪ねられる「南部煎餅の里。」へ。
写真:安彦幸枝、tarakusa